マーメイド・セレナーデ
窓ガラスに微かに映った自分の姿。その顔が何とも言えない泣きそうな顔をしてて情けない。
今日1日、気を抜いたときはずっとこんな顔だったと簡単に想像できて何度目かもわからないため息が零れた。


それでも手は慣れたもんで、きれいに畳んでいく。慣れって恐ろしい。
お客さんが少ないうちにと店の中を回り、いくつかをピックアップして、ボディにあてる。

これに、ジャケット合わせて……。ブルゾン……?


頭では、翔太のこと考えてるのに無意識と手は動く。


幸い、店長が言っていたように忙しくなるみたいで働いている間は考える暇もなく進んでいく。

これから先1ヶ月先翔太が出張が多くなると言っていたけどあたしもこれから2ヶ月ぐらい忙しくなるみたい。
どうやら大規模で売出しをするみたい。ブランドの売り込みを本社でするみたいで店長は売れるぞーと意気込んでる。

忙しさで、翔太が居ない寂しさを紛らわせるかしら。

新作入荷の金曜日はいつもに増して忙しかった。

それでもふとしたときに、寂しさに襲われて手が止まる。
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