マーメイド・セレナーデ

忙しい日常

翔太になんと言って休みが取れなかったと言えばいいのだろう。
店長の渋った顔を思い出してあたしはため息をつく。


出張続きで直接顔を会わせることがないから話すタイミングも逃す。だからといって顔の見えない電話で翔太の怒りを買いたくなくて悩んでた。


今日は久々にゆっくりと顔を会わすことが出来るから、なんと言えば翔太の怒りを和らげて伝えることが出来るか考えていた。

かちゃりと鍵が回されて、翔太の帰宅を耳で理解する。
まだいい言葉は全く浮かんでいなかった。



「おかえり」

「おぉ、」



するりとネクタイを外した様に見とれて、浴室へと消えていく背中を見つめてしまう。

夕食もお互い済ませての帰宅だから話すタイミングが掴めない。

25日しか休めないわ、と言ったら翔太は何と言うかしら。
なにも言わず、ただ不機嫌そうになるのが目に見えてわかってあたしも落ち込む。


聞かなかったことにしたいわ。

翔太に話すと考えただけで気が滅入ってしまうわ。
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