マーメイド・セレナーデ

これが全て

一瞬、前が見えなくなった。


開け放たれた重厚な扉の向こう側は、別世界だった。
そんなメルヘンなことが頭の中を過ぎった。

それくらい思考が一旦停止した。


真っ暗で、もちろんところどころにライトアップされているから見えないわけではないけれど、朝の優しい日差しに慣れていた目は光の強弱についていけなかった。


呆然とと立ち尽くして片側から見える全てを目に映す。



「これって……」



ざわざわとする会場内もあたしが想像し得なかったものでただただ見入るだけだった。


外から見る限りでも広い会場だと思っていた。
中を覗いてみればそれは間違いではなかった。

開けた扉のそばに立ってる彼女を見て、あたしは慌てて会場の中に2~3歩足を踏み入れた。
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