マーメイド・セレナーデ
カチカチと時計の音だけが聞こえる。何もないこの部屋で時間を潰すのはあまりにも退屈過ぎる。

翔太はもう、あたしなんて居ないものとして振舞うから、どうしていいのか分からない。

声を出そうにも、無視されそうだし。
それよりあの眼で睨まれてしまうかもしれない。


何もすることがないから、あたしはぐるりと部屋を見渡した。
物が少ないから、きれいに見える。

……でもきれいすぎる?
生活してる感じがしない。

どうして、なんて疑問を押し殺して。
これ以上考えずにすむように机に伏せて、何も視界に入れないようにした。
< 40 / 302 >

この作品をシェア

pagetop