マーメイド・セレナーデ
「ど、ゆこと」



舗装されていない畦道をガタガタ進む翔太の黒の車。
ようやく言葉を思い出して投げ掛ける。



「俺様もそっちに住んでんだよ、わかんねえのかお前、頭悪いな」

「なんでよ!あんたと離れたいがために遠い街に一人暮らししてるのよ!なんであんたまでくるのよ、許婚なんて親の決めたことわざわざ守るなんておかしいじゃない」

「うるせえ、俺様の勝手だ」

「冗談じゃないわ、下ろして。自分で帰れる」



ドアに手を掛けたが一向に止まろうとしない、痺れを切らして走行中でも開けようかとしたら、ドアロックされ開けられない。



「何するの、下ろして!あんたなんかと一緒に居たくないの!」



キキっと乱暴にブレーキが掛かり前に少しつんのめる。
サイドブレーキを上げ、完全に止まった車、緊張が走る。
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