マーメイド・セレナーデ

離れた距離

「あさ……」



家に着いて真っ先にお風呂に入った。

帰らなければよかった。
こんなに心乱されるなら帰らなければよかった。


翔太に会わなければよかった、無理矢理でも一人で帰ってくればよかった。


知らなくてもいいことまで知ってしまった。
あの高級マンションに住んでたなんて、知らなくてよかった。


会いたくない、会うかもしれないと怯えながら暮らしたくはない。



「不動産に………って着信?」



点滅するランプに電話が何件もあったことを知る。電話にでなかったことでメールが1通来ていた。



「仕事、………本当に入った」
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