消えた影
「とまあ、こんな感じなんだ。最も二つ目の八百面相の方はインターネットで流れている情報だけどね」

「とってもよく分かりました。さすがオカルトクラブの部長ですわ」


熱烈な演技を終えハァハァと肩で息をする尊に、姫菜は心からの拍手を送った。


「一つ目のナスカの事件の方が本間くんの好みですよね」

「うん。でもUFOマニアは結構冷めた目で見てるよ。確かに今更感はあるもんね。地上絵がUFOの発着場だったって説は、七十年代に散々流行ったんだけど、最近じゃ否定されている傾向にあるし。考古学の見地からは支配階級の埋葬の儀式だとか古代の人々が気球を発明してただなんて説が……さらには……〇〇が××して、△△なわけさ……僕なんかはどっちかっていうと⬜︎⬜︎の説を……」


専門知識を並べ立て、熱心に丁寧に話を続ける尊くん。


「そうなんですか……へえ……あらまあ……ふうん……」

(言ってることは半分分からないけど、それでもいいの……本間くんが私にだけしゃべってくれている。それだけで姫菜は幸せです……!)


彼女がちょっと顔を伏せるなり、人相の悪い第二人格、過激で積極的な「裏姫菜」が現れニヤリと笑みを浮かべる。


(ほらな!この話題を振って大正解だぜ!その調子でジャンジャン盛り上げんだよ!)


顔を上げた瞬間にはもう、いつものおっとりとしたお嬢様に戻っている。
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