消えた影
「今日の議題は……まあ、こんなところかな?」


本間尊……自他共に認めるオカルトマニアの中学一年生は、チョークの粉を払って一息ついた。

彼が黒板に書いたのは、その二つの事件についての詳細だ。

一方は「ナスカにUFO到来!?」、もう一方は「都内に謎の怪盗『八百面相』現る!?」ときている。


「いやあ、二つとも実に興味深い事件だよね」

「あの……本間くん、もう少しわかりやすく教えてもらえますか?」


姫菜(ひめな)がこう切り出すと、途端に彼の顔はパッと明るくなった。


「もちろん。オカルトに詳しくない人に分かりやすく伝えるのも、マニアの役目だからね」

「わあ、ありがとうございます。なんかワクワクしちゃいます」


夏休み登校日のがらんとした教室に、若い男女の声が響く。

オカルトクラブの部活動といえば聞こえはいいが、部員は二人だけ。

が、しかし!

古今東西のマニアックなオカルト知識はバッチリでも、恋愛方面では疎い少年「尊くん」に密かに憧れている相園(あいぞの)姫菜さん。

彼女にとって、二人きりの部活はまさに至福の時なのだった。

ていうかまあ、彼女はこの瞬間のためだけに部員をやっていると言ってもいい。


(さあ姫菜、勇気を出すのよ!何か本間くんと楽しく話せる話題はないかしら……)


必死に考えてやっとのことでこの胡散臭いニュースのことを口にしたら、大当たりだったというわけだ。


「じゃあ、まずは第一の事件だけど……」


彼は身振り手振りを交え、その場にいたかのような迫真の演技を始めた。
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