【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
◇ エピローグ




紗友がいなくなってから、5回目の冬が来た。


時間は一寸も狂うことなく進んでいき、俺は大学2年生になった。


あの不思議な一週間のあと、俺は勇気を出してクラスのバスケ部の男子に話しかけてみた。

最初はお互い手探りでぎこちなかったものの、バスケの話題をきっかけに息投合し、高校を卒業した今でも連絡を取り合う仲になった。

大学でも自分から声をかけることで、数人ではあるが友人ができた。

こうして行動を起こせたのはきっと、紗友が俺に人と触れ合う心地よさを教えてくれたおかげだ。


そうして今は、バスケのコーチライセンスを取得するために大学で勉強に励んでいる。

それから、あの頃と変わったことと言えば、もうひとつ。


「悠樹、弁当できたぞ」

「あ! ありがとう、兄さん」


家を出て、悠樹とルームシェアしているといいうことだ。

卒業後、俺の大学に近いアパートの一室を借りて生活をしていたところ、翌年高校を卒業した悠樹も一緒に住むと言って転がり込んできたのだ。

男ふたりのルームシェアも悪くない。


家事は分担制ではあるものの、料理担当はもっぱら俺だ。

紗友とキッチンに立ってから料理の面白さと奥深さに目覚めてしまい、最近では凝った料理にも挑戦している。


俺は今、深呼吸をしながら暮らせている。
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