【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ
そんなこと知る由もない綾部は、こちらに大股で近づき俺の肩を思い切り掴む。
「しっかりしろよ! お前が今こんな有様なだなんてショックだ。お前がいたから俺はエース番号もらえなかったし、高校の推薦もとれなかった。……俺から全部奪っておいて今のお前がこんなんじゃ、中学の時の俺が報われないだろ!」
綾部の歯に衣着せぬ物言いに鼓動が荒くなる。
体温が一気に下がっていく。
がんがんと肩を揺すってくる綾部に、脳髄まで揺さぶられているようだ。
それなのになにも言えない。
顔を真っ青にするばかりで、音はなにひとつとして喉の奥で絡まって出てくることはない。
「早く前向けよ。いつまでそうやってうじうじしてるんだよ……! 逃げんな。もっと真剣に生きろよ! みんな歯食いしばって生きてんだぞ!」
今もまだ鈍く痛む心に土足で踏み入れられ、かさぶたにもならず鮮血を流す傷を抉られる。
足元からアスファルトの地面にひびが入って一気に崩れ、奈落の底に落ちていく。
水中に突き落とされたように声が遠のき、ぐわんぐわんとエコーがかかって聞こえてくる。
やがてそれに重なるように、意識のどこかから声が聞こえてくる。
『優秀な悠樹と違ってお前は出来損ないだからな。まったく、どっちに似たんだ?』
『バスケしかないだろ、お前には』
父親の声だ。
まるで追い打ちをかけるように俺を責め立てる。
ぐにゃりと世界が歪む。
視界が定まらない。
これは現実だろうか。
今、自分がどこにいるかわからない。
俺を囲っていた脆い世界が、ぱりんと音を立てて崩れ落ちていく。
今までぎりぎりのところでなんとか保っていた細い精神の糸が、ぷっつり切れた。