原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 怒鳴る妻とヘラヘラ笑う息子をたしなめて、フライ男爵はミシェルに尋ねた。
 この人があまりミシェルに関わってくる事はないのだが、本能的にこの叔父が一番冷酷だと彼女は気付いていたので、直ぐに返事をした。


「それは本当です……」

 こんな奴等には、さすがに王太子との事を話すつもりはなかった。
 上手く彼との恋が成就して王城へ迎えて貰ったら、こいつらとはバイバイだ。
 私にしつこく寄生してくるなら、殿下に頼んで
3人まとめて首チョンパしてやるし。


「そうか、だったら来月の仮面祭りの日に、アラカーンのラシードがウチに来る。
 借金を無かったことにするからミシェルを第5夫人に迎えたい、と前々から頼まれていた。
 お前はそのままアラカーンへ嫁に行け」


 次代ラザフォード侯爵のウェズリーとの縁がなくなったので、義父である叔父はミシェルを40歳以上も年の離れた異国の商人ラシードの5番目の妻にすると決めた。 
 そして彼から借りた金をチャラにして貰うと。


 拒否の言葉は、口にするだけ無駄な事だとわかっている。
 こうして叔父によりミシェルは祭りが終われば、結婚という名目で砂漠の国に売られていく事が決定されたのだった。
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