原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
「……あのさぁ、一番最近は夏休み明けに確認してきただろ?
 それも忘れてんの?
  お前さぁ~祭りなんて行って大丈夫なの?」

「……あ、ああ、そうだったよな……大丈夫だ」

「俺がお前んとこへ行ってもいいけど~?」


 沈着冷静な普段からは想像もつかない、落ち着きの無いオスカーを心配して、わざと軽い調子で
グレンジャーが尋ねた。

 魔法で髪を染める事を約束していたが、本調子に見えない友人を祭りに1人で行かせていいのか、迷う。


 何度も俺も一緒に行こうかな、と明るく誘ってみたが。
 俺は1人で行くから、とオスカーは頑なだった。


 髪を染めて夜の祭りに出かけるなんて、普通は
身バレせずにはっちゃける為にする事だろうが。
 生真面目なオスカーがそんなわけはない、と信じているグレンジャーだ。



 1年前から明日の約束をするぐらいなのだ。
 余程の事情があるだろうに話してくれない事は悔しいが、多分俺を巻き込みたくないのだろう、とは想像がつく。


「いいよ、約束通りに俺が18時にお前のウチへ行くから」

「……わかったよ、待ってるからな」

「すまない、ありがとう」


 オスカーは明日の事で緊張しているのか、顔色が悪かったがグレンジャーに何度も礼を言い、帰っていった。


 その後姿を見つめるグレンジャーの赤い瞳が、暗い光を灯して揺れていた。
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