原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 コルテス侯爵から彼女は、アビゲイルとの交友を止められた。
 アビゲイルと話せる機会は学苑内しかない。


 教室まで送ると言ったのに、ロザリンドに断られた。
 じゃあせめて、と締めていた濃紺のネクタイを外して彼女に差し出した。

 濃紺はオスカー達高等部3年生の学年色だ。
 男子は学年色のネクタイを、女子はリボンを結んでいた。
 カップルはそれを交換するのがこの学苑の習わしで、教師達もそれを黙認している。


 ロザリンドは差し出されたオスカーのネクタイを受け取るのに躊躇した。
 本当は恥ずかしくて動けなかったのだが、オスカーにはそう見えた。


「ロージーはリボンくれないの?」


 オスカーの低い声に言われて、ロザリンドは慌てて自分の臙脂色のリボンをほどいて彼に渡した。

 オスカーのクラスメート何人かが驚いた目でふたりのやり取りを見ている。


「タイ、結んであげようか?」
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