原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 あの時は殴られるかも、と思った。

 今から思うと、ウェズリーと思い出したくもなかったあの男が瞬間重なったのだろう。
 早く逃げなくては、と慌てて、腕を掴まれた時に『それ』に襲われたのだ。


 まさしく、襲われるようだった。
 頭の中に色々な情景が浮かんで消えて、何人もの人間の顔が流れて。
 吐き気を催すほどの膨大な情報を受け止められなくて、シャットダウンした感じで、ロザリンドは意識を失ったのだ。


 だが今は落ち着いて。
『それ』を、受け入れつつある。


 それも貴方のおかげだ、とオスカーに告げたかった。
 貴方が抱いてくれていたから、私は……
 そう言葉にしない代わりに、ロザリンドはオスカーの手をぎゅっと握った。


 ウェズリーがロザリンドを殴るつもりじゃなかったのは、今ならわかる。
 彼は自分が考えたキャラクターだ。
 この物語には、女性を殴る男はひとりも登場させていないからだ。

 彼は考えなしの馬鹿者だけど、その疑いだけは
晴らしておいてあげよう、とロザリンドは思った。
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