かげろうの月
キャッシュカード
      
 日本人の多くの家庭は、妻が夫の給料を管理していて、夫には"お小遣い"として、決まった額を毎月渡している。
うちもその典型的な家庭だ。
 
 尚哉はお金があれば、あるだけ使ってしまうところがあり、経済観念がないのだ。
 結婚する時の彼の貯金は1円も持っていなかった。
なので、家計の遣り繰りは私が管理することになった。
 
 尚哉の1ヶ月の"お小遣い"は4万5千円だ。これでは女と行くホテル代や、女との美味しい食事代を夫が払っていたら、足りる訳がない。
 尚哉はお金を要求するようになっていった。その額は1万、2万と増えていく一方だった。

 尚哉の帰宅時間は殆ど深夜で、家で食事をする事も無くなった。
平然と無断外泊を繰り返している。
 
 いつも不機嫌で帰って来る夫とは、殆ど話さないが、口を利く時は、私への文句の言葉だった。それに対して私が言い返せば、そこで口喧嘩になる。

 ある晩、尚哉は険しい口調でこう言った。
「これからお金はオレが管理するから、銀行のキャッシュカードを渡してくれ! 生活費は払うから」

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