聖女、君子じゃございません
(アーシュラ様との結婚が認められた……)


 俺は一人、感慨に耽っていた。ずっと胸の中で渦巻いていた、不安や蟠りといった感情が一気に溶けだしていく。目頭がグッと熱くなった。


「殿下……! わたし、殿下のことを好きになってしまったかもしれませんっ」

「――――――はぁっ⁉」


 けれどその時、アーシュラ様の爆弾発言が、俺を現実へ一気に引き戻した。アーシュラは瞳をキラキラ輝かせ、殿下の手をグッと握り返す。俺は慌てて二人の間に割り入った。


「アーシュラ様っ! 俺への想いは、そんなものだったんですか⁉」


 我ながら情けない声が出る。一気に絶望の淵へと叩きつけられたような気分だった。
 けれど、アーシュラ様と殿下は二人して、声を上げて笑っている。ここに来て、何故だか一気に仲良くなっている。本気で妬けた。


「おまえ、どんだけアーシュラのこと好きなんだよ」


 冗談に決まってるだろう? と口にし、殿下は目尻に涙を滲ませる。


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