聖女、君子じゃございません
「アーシュラ様が休んでいる間に、あなたの部屋を片付けておきますから。それで良いでしょう?」

「そだね……それが一番良い方法かなぁ」


 俺の身体に凭れる様にして、アーシュラ様は歩く。「抱えましょうか?」と聞いてみたが、アーシュラ様は首をブンブン横に振って拒否した。
 確かに、街中ならまだしも、こんな場所でそんなことをしたら、とてつもなく目立つだろう。普段飄々としているアーシュラ様が、俺の腕の中で恥ずかしそうにしている所を想像すると、何だか笑えて来る。


「……! ローラン様、あれ!」


 だけどその時、アーシュラ様は路地裏を指さすと、一目散に走り出した。先程までフラフラしていたというのに、物凄い変わりようだ。俺は急いで後を追った。


「大丈夫⁉ ……いや、見た感じ全然大丈夫じゃない! しっかりして! って言っても、その調子じゃ無理ですよね!」


 疲れで気が動転しているのだろうか。言葉の端々から、冷静さを欠いていることが伺える。


「アーシュラ様、落ち着いて」


 見れば、アーシュラ様は年の頃八歳ぐらいの子どもを抱えていた。骨と皮のように痩せ細り、肌や唇がカサカサに乾いている。着ている服がズタズタに擦り切れて、肌がところどころ露出している。そんな有様故、性別すらよく分からなかった。


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