聖女、君子じゃございません
「……せっかくお礼にもらった品々なんです。そのまま持っておかれたらいかがですか? 別にお金には困ってないでしょう?」


 領主達のところに赴くと、聖女の祝福を頼まれることが多い。
 アーシュラ様は言われるがまま祝福を与えるのだが、謝礼基準はなく、今のところお礼はピンキリである。本人は、貰えるものはありがたく貰う、をモットーにしているらしい。


「だって、こんな高価な宝石、身に着ける機会ないしぃ」


 見て見て、と宝石を見せびらかしつつ、アーシュラ様はニンマリ笑う。


「そんなこと言って。一度王都に帰還するよう、王太子殿下から手紙が来ているでしょう? アーシュラ様を夜会に招待したいって。石を身につける機会なんて、これから嫌って程ありますよ」


 言えば、アーシュラ様はウっと言葉を失う。俺が知らないとでも思っていたのだろう。浮かない表情をしていた。


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