聖女、君子じゃございません
「それで? 一体何を隠したんですかっ?」


 アーシュラ様はそう言って、俺の背中にヒョイっと手を回す。突拍子もなく、抱き締められるような形になって、心臓がドキッと跳ねた。


「べっ……別に隠してなんか」

「嘘吐き~~! 何々? エロ本とかですか? それならわたしもご相伴に……」

「馬鹿な事言わないでくださいっ。……ほら、ただの両親からの手紙ですよ」


 これ以上変な勘繰りをされては堪らないので、俺は渋々、隠していた方の手を前に出す。くちゃくちゃになった手紙。アーシュラ様は興味津々でそれを見つめると、そっと俺の顔を覗き込んだ。


「何が書いてあるの?」


 彼女の耳には、先日俺が贈ったばかりのイヤリングが揺れている。アーシュラ様の髪の色とも、瞳の色とも、額の秘宝の色とも違う、青色をしただけの価値のない石。けれど、本人はいたくお気に召したようで、毎日毎日、飽きることなく身に着けている。


「ねぇ、何が書いてあるの?」


 こういう時のアーシュラ様はしつこい。観念して、俺は中を開いた。


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