聖女、君子じゃございません

11.明かされる真実と全幅の信頼

 アーシュラ様は男性の治癒を終えると、大きなため息を吐いた。重症患者だ。治癒にあたって、アーシュラ様の体力をも大きく消費したのかもしれない。


「アーシュラ様、もう数日、この街への滞在を延ばしましょうか?」


 それはこれまでも、当然のように行われてきたことだ。アーシュラ様は、重病患者の治療の後、しばらくは経過観察期間を設ける。きちんと治癒ができているか不安らしい。
 また、ジャネットの時のように、栄養管理が必要な場合もある。だから、今回もそうするだろうと思って口にしたのだが――――。


「いえ、即刻ここから立ち去りましょう」


 アーシュラ様はそう言って、スクッと立ち上がった。いつも笑顔のアーシュラ様にしては珍しいしかめっ面だ。俺は小さく首を傾げた。


「待ってくれ、ウルスラ!」


 そう口にしたのは、先程まで瀕死の重症を負っていた男性だった。まだ若く体力もあるせいか、治療が終わったばかりだというのに無駄に元気だ。男は勢いよく起き上がると、アーシュラ様の手を掴んだ。


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