地味子なのに突然聖女にされたら、闇堕ち中の王子様が迎えにきました
大穴の底に落ちたはずなのに、目を覚ますとそこは自分の部屋だった。
おかしい、昨日ソフィアに2層から落とされて……、
どうして、私生きてるの?
昨日のことを思い出すと、ひゅっと足がすくむ。思わず身の毛がよだって自分の両腕をさすった。そして、目から熱いものが溢れだした。唇がわなわなと震える。
私がどんな悪いことをしたというのだろう。
親の顔だって罪状だって分からないのに、物心ついた頃から罪人の娘だと罵られ、風貌が皆と違ったこともあってずっと差別されていじめられてきた。
理不尽だと思いながらも、自分は罪人の娘なのだと、多くを求めず幸福や喜びといった感情を避けて、慎ましく自戒して生きてきたつもりだった。
いつも、きっとこれ以上、不幸せなことは起こらないって自分を奮い立たせながら生きてきたのに。
だけどもうそろそろ限界。こんなことなら、いっそ、こんな理不尽な世界から消えてなくなってしまいたい。
虚ろな目で、あのまま死んでしまった方が幸せだったのかもしれない。とふと思ってしまった。
ぎゅっと目を閉じて、両腕で自分を抱きしめる。思わず泣き叫びだしてしまいそうになるのを、ぎゅっとまた下唇を噛んで耐えた。
いつものように学校へ行くと、ソフィアが私の姿を見てぎょっと、まるで幽霊でも見たかのような顔をした。だけど怖がっているのか、なんの接触もされず、少し安心する。
正直、自分でもちょっと幽霊なんじゃないかと思ってしまう。イヴは自分の体が透けてるんじゃないかと両手をまじまじと見つめた。
そんな、自分の生死に関わる大事件が起きたにも関わらず、学校でもまた大騒動が起きていた。朝早くから、昨日ソフィアから変わってと言われた水やりをやっていたところ、急遽、校長先生から全校集会の号令がかかったのだ。
全校生徒が講堂へ集められ、校長先生から、今日の授業は全面中止となり、午後からソフィアの結婚式を執り行うことになった、と告げられる。
しかも嫁ぎ先の帝国ラスティンの伯爵アンバーはもちろん、招待客も呼んでいるらしい。
他国から人を呼んで催事をするなんて前代未聞であり、教師陣達と国の幹部要人達は只事ではない雰囲気になっていた。
逸材の美少女と名高いだけあった。まさか、秘境メンフィルで結婚式が行われるなんて。イヴは、大人達の慌てふためきぶりに、殊の外、事の重大さを実感した。
本人のソフィアは感極まって、両手で顔を覆って嬉し泣きしている。主役となる彼女は、早々に別室へ連れて行かれた。
彼女はやはり別格な存在だった。
昨日自分へ向けた殺意に満ちた狂気的な表情とは打って変わって、この世の幸せを全て享受したかのような顔。
どうしてこんなに世界は不公平なんだろうか。
私を昨日殺そうとした人間が、あんな幸せそうな顔してるなんて。
講堂の大広間では、選りすぐりの可愛い少女達が10人程集められ、舞の練習をしている。踊るとふんわり広がるピンク色のドレスに花冠を付けて。花篭を持った数人が、花びらを撒きながら踊る天妖族の伝統舞踊だ。
そこにはシェラルや、昨日ランチでイヴを貶した子達も含まれる。皆、一人一人華がある子達。
今まで国の式典などで学生達が踊ることはあったが、他国から来たの人の前で披露するのは初めてだ。
私も授業で習ったことはあるが、1人毛色が違うからと皆と一緒に踊らせてもらうことはなかった。髪色が地味だから一人浮いてしまうと。確かに私の髪にあんな艶はない、光に反射してキラキラ輝くことはできない。
髪だけではなく、きっと、私という存在も。
生涯、ああやって皆の注目を浴びて輝くことはないのだろう。
そして始まった、ソフィアの結婚式。
メンフィルで一番立派な建造物、ミスリエット大聖堂で執り行われる。1Fのメインホールと2F席、3F席まであり1000人以上収容できる。全校生徒を始め、国民のほとんどが出席する。まさに国を挙げての祭典となる。
イヴは同じクラスということもあって1F席の前から3列目だった。
席へ着くとすでに、壇上の椅子に肩肘をついて、足を組みながら不遜な態度の男がどかっと座っていた。あれが帝国ラスティンの伯爵アンバー、ソフィアが嫁ぐ相手か。
胸元が大きく開いた白いシャツに、黒のズボン。結婚式の衣装とは思えない賊っぽい格好だ。腰には剣も携えている。
「皆さま、静粛に。これよりソフィアが入場します」
壇上の裾から、純白のドレスを纏ってゆっくり現れた。まるで本当に天使のように綺麗で、会場中から感嘆の声が漏れる。
アンバーの前にソフィアが跪き、さっき練習したのであろう要人から用意されたセリフを言う。
「アンバー様、お初にお目にかかります。私、ソフィアと申します。この度は、私を妃として選んで頂きまして誠に感謝しております。帝国ラスティンの伯爵であらせられるアンバー様に嫁げますことは、このフェンリルにとっても至極幸福の結びと、国民皆喜んでおります」
良い終わると上目遣いでアンバーを見つめ、微笑んだ。
女子が憧れる夢を全て叶え、これ以上ない位の羨望の眼差しを一身に受ける。
ソフィアのあまりに完璧な姿と立ち居振る舞いに、会場中が息を飲んで見惚れていた。
おかしい、昨日ソフィアに2層から落とされて……、
どうして、私生きてるの?
昨日のことを思い出すと、ひゅっと足がすくむ。思わず身の毛がよだって自分の両腕をさすった。そして、目から熱いものが溢れだした。唇がわなわなと震える。
私がどんな悪いことをしたというのだろう。
親の顔だって罪状だって分からないのに、物心ついた頃から罪人の娘だと罵られ、風貌が皆と違ったこともあってずっと差別されていじめられてきた。
理不尽だと思いながらも、自分は罪人の娘なのだと、多くを求めず幸福や喜びといった感情を避けて、慎ましく自戒して生きてきたつもりだった。
いつも、きっとこれ以上、不幸せなことは起こらないって自分を奮い立たせながら生きてきたのに。
だけどもうそろそろ限界。こんなことなら、いっそ、こんな理不尽な世界から消えてなくなってしまいたい。
虚ろな目で、あのまま死んでしまった方が幸せだったのかもしれない。とふと思ってしまった。
ぎゅっと目を閉じて、両腕で自分を抱きしめる。思わず泣き叫びだしてしまいそうになるのを、ぎゅっとまた下唇を噛んで耐えた。
いつものように学校へ行くと、ソフィアが私の姿を見てぎょっと、まるで幽霊でも見たかのような顔をした。だけど怖がっているのか、なんの接触もされず、少し安心する。
正直、自分でもちょっと幽霊なんじゃないかと思ってしまう。イヴは自分の体が透けてるんじゃないかと両手をまじまじと見つめた。
そんな、自分の生死に関わる大事件が起きたにも関わらず、学校でもまた大騒動が起きていた。朝早くから、昨日ソフィアから変わってと言われた水やりをやっていたところ、急遽、校長先生から全校集会の号令がかかったのだ。
全校生徒が講堂へ集められ、校長先生から、今日の授業は全面中止となり、午後からソフィアの結婚式を執り行うことになった、と告げられる。
しかも嫁ぎ先の帝国ラスティンの伯爵アンバーはもちろん、招待客も呼んでいるらしい。
他国から人を呼んで催事をするなんて前代未聞であり、教師陣達と国の幹部要人達は只事ではない雰囲気になっていた。
逸材の美少女と名高いだけあった。まさか、秘境メンフィルで結婚式が行われるなんて。イヴは、大人達の慌てふためきぶりに、殊の外、事の重大さを実感した。
本人のソフィアは感極まって、両手で顔を覆って嬉し泣きしている。主役となる彼女は、早々に別室へ連れて行かれた。
彼女はやはり別格な存在だった。
昨日自分へ向けた殺意に満ちた狂気的な表情とは打って変わって、この世の幸せを全て享受したかのような顔。
どうしてこんなに世界は不公平なんだろうか。
私を昨日殺そうとした人間が、あんな幸せそうな顔してるなんて。
講堂の大広間では、選りすぐりの可愛い少女達が10人程集められ、舞の練習をしている。踊るとふんわり広がるピンク色のドレスに花冠を付けて。花篭を持った数人が、花びらを撒きながら踊る天妖族の伝統舞踊だ。
そこにはシェラルや、昨日ランチでイヴを貶した子達も含まれる。皆、一人一人華がある子達。
今まで国の式典などで学生達が踊ることはあったが、他国から来たの人の前で披露するのは初めてだ。
私も授業で習ったことはあるが、1人毛色が違うからと皆と一緒に踊らせてもらうことはなかった。髪色が地味だから一人浮いてしまうと。確かに私の髪にあんな艶はない、光に反射してキラキラ輝くことはできない。
髪だけではなく、きっと、私という存在も。
生涯、ああやって皆の注目を浴びて輝くことはないのだろう。
そして始まった、ソフィアの結婚式。
メンフィルで一番立派な建造物、ミスリエット大聖堂で執り行われる。1Fのメインホールと2F席、3F席まであり1000人以上収容できる。全校生徒を始め、国民のほとんどが出席する。まさに国を挙げての祭典となる。
イヴは同じクラスということもあって1F席の前から3列目だった。
席へ着くとすでに、壇上の椅子に肩肘をついて、足を組みながら不遜な態度の男がどかっと座っていた。あれが帝国ラスティンの伯爵アンバー、ソフィアが嫁ぐ相手か。
胸元が大きく開いた白いシャツに、黒のズボン。結婚式の衣装とは思えない賊っぽい格好だ。腰には剣も携えている。
「皆さま、静粛に。これよりソフィアが入場します」
壇上の裾から、純白のドレスを纏ってゆっくり現れた。まるで本当に天使のように綺麗で、会場中から感嘆の声が漏れる。
アンバーの前にソフィアが跪き、さっき練習したのであろう要人から用意されたセリフを言う。
「アンバー様、お初にお目にかかります。私、ソフィアと申します。この度は、私を妃として選んで頂きまして誠に感謝しております。帝国ラスティンの伯爵であらせられるアンバー様に嫁げますことは、このフェンリルにとっても至極幸福の結びと、国民皆喜んでおります」
良い終わると上目遣いでアンバーを見つめ、微笑んだ。
女子が憧れる夢を全て叶え、これ以上ない位の羨望の眼差しを一身に受ける。
ソフィアのあまりに完璧な姿と立ち居振る舞いに、会場中が息を飲んで見惚れていた。