その溺愛は後出し不可です!!


「ウメキチ、お前は好きでもない男とキスするような女なのか?」
 
 真顔で問いかけられ、果歩はギョッと目を丸くし、顔には赤いものが差し込む。

「み、見てたの!?」
 
 鉢合わせしたその後も特に話題に上らなかったので、てっきり見られていなかったのだろうと高を括っていたのに……。
 恥ずかしさのあまり顔から火が吹き出しそうになる。

「あのなあ、目撃したのが俺だったから良かったものの、エレベーターの中でイチャつくなんてお前ら油断しすぎ。てか昴が浮かれ過ぎ」

 呆れ半分、嗜め半分。
 いつもふざけた口調の篝にまともにお説教をもらうとは果歩も思ってもいなかった。

「ほら、少しは根性出せよウメキチ。あいつ、拗ねてるだけで本気で怒ってねーよ。昴が好きならちゃんと言っとけ」

 篝は果歩を小突き発破をかけると、ポケットに入れてあったシリアルバーを一本お裾分けしてくれた。

「ありがとう、ジローさん」

 背中を押してくれる仲間の存在にはいつも救われる。
 篝の言う通りだった。
 果歩は現状を嘆くだけで、自分ではまだ何も為していない。
 簡単に忘れられるほど、昴への想いは小さくない。
 自分の気持ちを伝えるべく果歩はもらったシリアルバーを食べながらスマホを手に取った。なけなしの勇気を振り絞り、二人きりで話がしたいと昴にメッセージを送る。
 返事があったのは更に一時間後のことだった。
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