円満夫婦ではなかったので


『他人の不倫を言いふらす趣味はない』

『そうですよね。彬人君、口が堅そうだもの』

『そのなれなれしい呼び方は深いだからやめろ』

彬人がぎろりと睨みながら言う。

『ごめんなさい、つい癖で』

希咲はショックを受けたように、目を伏せる。すると黙ってやり取りを聞いていた中山が割り込んできた。

『彬人、呼び方くらいでそんなきつい言い方をしなくてもいいだろ?』

『中山は口出ししないでくれ』

放っておいたら、言い争いを初めてしまいそうだ。希咲は苦笑いをしながら、ふたりに割ってはいる。

『中山君私は大丈夫だよ。彬人君も、話を脱線させないでね。それでお願いの続きなんだけど……』

そのとき、中山のスマートフォンから着信音が鳴った。

『あ……』

画面を確認した中山の顔色が変わる。彼は希咲に断り席を外す。しばらくと慌てた様子で戻ってきた。

『ごめん。すぐに帰らないといけなくなった。妻が怒っていて』

『そうなんだ。ここは大丈夫だから帰った方がいいよ』

希咲はにこりと笑顔で言った。彬人は怪訝そうに中山が去っていく姿を見ている。

ふたりきりになると、彬人は深いため息を吐いた。この状況が苦痛でも言いたげだ。

< 170 / 170 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:139

この作品の感想を3つまで選択できます。

  • 処理中にエラーが発生したためひとこと感想を投票できません。
  • 投票する

この作家の他の作品

表紙を見る 表紙を閉じる
公爵令嬢のメレディスは不治の病に罹ったため婚約破棄となり地方に旅立つことになった。 道中で盗賊に襲われるが、王弟カイエンに助けられる。 冷酷と噂のカイエンだが、メレディスにだけは優しくて…… 加筆修正したものを、マカロン文庫6月刊で書籍化予定です。
第一印象最悪の彼が、最愛の旦那さまになりました
[原題]氷の男・御曹司社長がお呼びです~君が結婚相手に最適なようだ~

総文字数/102,602

恋愛(オフィスラブ)172ページ

表紙を見る 表紙を閉じる
楠木千咲(くすのきちさき)はとある事情で急ぎの婚活中。 ある日、勤務先でリリース予定ののマッチングサービスに登録したら相手がまさかの社長水無瀬澄春(みなせすにはる)だった。 千咲はハイスペックだけれど厳しく冷たい澄春との結婚に及び腰だったけれど、一緒に過ごしている内に段々と惹かれていき……。 ※加筆修正したものを、2026年6月 ベリーズ文庫六月刊として書籍化予定です。
結婚なんて興味なし!なのに怜悧なパイロットが契約婚で溺愛豹変して
  • 書籍化作品
表紙を見る 表紙を閉じる
西條香澄 28歳 航空会社調達部勤務 × 天谷武流 31歳 将来有望な副操縦士 価値観が合わないふたりが、それぞれの事情のために契約結婚を。 お互い干渉し合わないようにつもりだったけれど、一緒に生活をしているうちに、意外と気が合うのが分かり…… ◇加筆修正(特に後半)したものがベリーズ文庫2月刊で発売予定です。よろしくお願いいたします。

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop