ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
13. 織江side パーティーは波乱がいっぱい

パシャパシャパシャッ……!!


「ひぇっ」

ギャリオンホテル、と金色の飾り文字で書かれた正面玄関前。
ドアマンが恭しく開けてくれた後部座席のドアから私と貴志さんが降りると、一斉に激しいフラッシュに晒された。警備員にそれ以上の侵入を阻止されているが、車寄せの端の方にカメラを構えている一軍が見える。

すかさず貴志さんが盾になるように間に入ってくれたけど、予想外のマスコミの多さに怖気づき、足が震えてしまう。

「あのぅ、話が違いませんか? 週刊文冬の記者に見せるだけなんじゃ……」

「パーティーを取材に来てる連中はもっといるさ。大丈夫、あいつらは芸能人以外興味ない」

涼し気なカオで肩をすくめる貴志さん。
そうは言っても……アイドルやモデルと浮名を流す噂の御曹司よ?
マスコミなら、興味ないわけないと思う。

「村瀬さーん! そちらの方はどなたですか!?」
「中条さんとは別れたんですかー!?」
「答えてくださいよー副社長!」

ほら、さっそくバレてるじゃない!

頬を膨らませて目を上げると、面白そうに口角を上げた彼がぐいっと私の肩を抱き込んだ。

そして、肩越しに後方のマスコミへ視線をやりつつ、私の耳元へ唇を寄せ――

意味深な仕草に、背後がどよめいたのがわかった。
再び始まるフラッシュの嵐……

「ちょ、ちょっと貴志さん、何してるんですかっ?」

「仕方ないだろ、あの中に文冬の記者がいるんだから。ほら、しっかり掴まれ。ここでコケて記事にされたくないだろう?」

な、なるほど。
ちゃんとカップルっぽいところを見せなきゃ、ここまで来た意味がない。

自分に言い聞かせて腹をくくった私は、身を寄せるようにして彼の腕に手を絡ませ、ゆっくり歩き始めた。

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