ツンデレ副社長は、あの子が気になって仕方ない
18. 貴志side アロハ男の正体

週明け――、オレは凄まじい罪悪感に苛まれながら仕事をこなしていた。

あの夜、織江との間に同意はなかった。つまり、レイプだと訴えられても仕方ない。
金もカードも残されたままだったから、割り切った関係にすらなれなかったということだろう。さすがに幻滅したか。

謝ろうと電話してもみたが、案の定出てくれなかった。
もう二度と、オレに微笑んではくれないんだろうな……。

それが何より辛いと思ってる自分に、呆れてしまう。
騙されたことを知って、あんなに腹を立てていたはずなのに。
この恋に未来などあるはずもないとわかっているのに。

とにかくもう気分は最悪。
とても一人きりであのマンションに帰る気にはなれなくて、外で飲んでいくことに決め、その日は早々に仕事を切り上げた。

時折気遣わし気な眼差しを向けてくるユキと明日の予定を確認し合いつつ、本社ビル地下の駐車場へ向かう。
そして、運転手が開けてくれた専用車の後部座席に乗り込もうとした時だった。

「貴志さぁんっ!! 待って、ねぇ待ってくださいっ!!」

どこから現れたのか、視界の端を白い塊が掠める。げ、と顔に出ていたと思う。
フリルとレースをふんだんに取り入れたスーツ――実用性は皆無だろう――を着た山内妹だった。

「山内さん、副社長とお呼びなさい。失礼よ」

窘めるユキを、反抗的な目が睨みつけた。

「ちょっとお仕事のことでご相談があるんですっ! ずっとそういってるのに、あなたが邪魔して伝えてくれないから、自分で来たのよっ」

「仕事のこと?」
適当におうむ返しにすると、長いまつ毛がばっさばっさと揺れ、ピンク色の唇が嬉しそうに緩んだ。

「はいっそうなんです。ちょっとだけ、お時間いただけませんか?」

小首を傾げてピュアさを演出してるつもりらしいが、ほんとに勘弁してくれ、とうんざりする。

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