雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
私の名を口にした後、課長は深いため息をつき、考えるように眼鏡を外して頭を抱えた。

これはなかった事にして欲しいというパターン?

私の想いに応えてくれたんじゃないの?

幸せだった気持ちがすぐに不安なものに変わる。

「後悔していますか?」

震える声で聞くと、顔を上げた課長が私の頭を撫でた。

「してないよ。だけど、中島さんに言わなければいけない事が俺にはあるんだ」

言わなければいけない事?

まさか課長、結婚しているとか? 奥さんがいるとか?

でも、課長は一人暮らしだって言っていた。
課長のマンションだって、課長以外の気配はなかった。

「課長は結婚しているんですか?」

怖かったけど、聞いた。
課長が苦笑いを浮かべる。

「結婚していたら、中島さんと二人だけで仙台までは来ないよ」
「じゃあ、何ですか?」

課長が小さく息をついた。

「不安にさせる事を言ってごめん。東京に帰ったらちゃんと話すから」

そう言って、課長は眼鏡をかけると車を走らせた。

聞きたい事は沢山あったけど、映画のフィルムを望月先生の所に届け終わるまでは、これ以上、聞いてはいけない気がした。

とにかく今は、仕事をしよう。
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