雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
深夜0時頃、家のインターホンが鳴った。こんな時間に誰かと思えば、モニターに映るのはスーツ姿の拓海さん。

玄関ドアを開けると、アルコールの匂いをさせた拓海さんが入ってくる。
遅くにごめん。望月先生と北山監督と飲んでいて、と言いながら拓海さんが家にあがる。

拓海さんをソファまで連れて行き、お水を渡した。

創立記念パーティーのあと、拓海さんは望月先生に連れ去られていたよう。私が気づいた時にはもう姿がなかった。

「今日は奈々ちゃんにやられた」

お水を飲んでから、拓海さんが私を見る。

「何か企んでいるのは知っていたが、『フラワームーンの願い』を上映するとは思わなかった。よく佐伯リカコが許したな。彼女、あの映画を人目にさらすの嫌がっていたのに」
「もう引退したから自由にしていいと言われました」
「ちゃんと許可取ってあったんだ」
「当たり前です。細野監督のご遺族にも許可を取りましたよ」
「脚本家の許可だけは取っていなかったようだが」

眼鏡の奥の瞳が少しだけ険しくなる。

「すみません。言ったら拓海さんに止められる気がして内緒にしました。どうしてもパーティーで上映したかったんです」
「阿久津部長が奈々ちゃんが暴走するから困ると言っていたが、その意味がわかった気がする」
「怒っていますか?」
「怒っていないよ。これからベッドで満足させてくれるなら、許可しよう」
「えっ、ベッドでって……拓海さん、酔ってるのに、するの?」

拓海さんが可笑しそうに笑ってから、眼鏡を外して「奈々ちゃんが欲しいんだ」と唇を重ねた。
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