雨宮課長に甘えたい【2022.12.3番外編完結】
「中島さん、俺、もう限界」

泣いていると雨宮課長が言った。
話し方が急に変わった気がする。

「限界? ああ、すみません」

必死に涙を拭う。

これ以上、雨宮課長を煩わせてはいけないと思うのに涙が止まらない。

今、私、面倒くさい奴になっている。

「本当にごめんなさい。あの、置いて帰って大丈夫なので。雨宮課長、お疲れさ」

言い終わらない内に抱きしめられた。

ふんわりと甘くてスパイシーな香りがする。ちょっと刺激的でセクシーな感じがして、ドキドキする匂い。

心臓がギュッて反応する。体が熱い。

この距離は近すぎる。

だけど、なんで抱きしめられているの?

気づかない内に、また車道に出ていた? またトラックに轢かれそうだった?

「中島さんは厄介すぎる」

ため息混じりの色気のある声が耳元に落ちた。

叱られているの?

「あの、すみません」

「危ういし、目に余る」

「本当にすみません」

「だからさ」

鼻先がぶつかりそうな距離で、雨宮課長と視線が重なる。

眼鏡越しの瞳にじっと見つめられる。

怖いぐらいに真剣な目。

そんな目で見ないで。

ドキドキが止まらなくなるから。
< 38 / 373 >

この作品をシェア

pagetop