ポケットに未練がましい恋歌を









1年位前のこと。
大弥君との出会いは、夜の駅前広場だったね。

椅子に座り、たった一人でギターをはじいていた彼。

耳を切り裂くような荒々しいギター音に重なるのは、満月もうっとりする優しい歌声。

初めてだったよ。
誰かの歌声を聞きながら、涙が止まらなくなったこと。


満月に吸い込まれるように聞こえなくなった、ギターの音。

代わりにザッザッと、コンクリートを踏む足音が耳に届いた。


「キミ、俺の歌を聞きに来てくれたのは、初めてだよね?」

私の瞳に彼が映りこんだと思ったら
私の涙を拭いながら、柔らかく微笑んでくれたよね?


「やっと出会えた。
 俺の夢を一緒に追いかけてくれる、運命の相手に」って。


今でも忘れないよ。
その時の大弥君の優しい笑顔。

童話の王子様が、お姫様に求婚してくれたみたい。

ロマンチックな雰囲気に、私はドキドキで、目が回りそうになったから。
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