とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side



さて。何故ここまで私が『魅了』に対抗する術が無いと思っているのかというと、だ。

『魅了』という能力(ギフト)について、私のラノベの知識だけでなく、この世界でどのように作用するのか、『こちらの情報』を探して調べたのだ。

これには、『筆頭婚約者候補』という立場が大いに役に立った。
皇宮の禁書を閲覧する権利を得たからだ。



まず、『能力(ギフト)』というものは、この世界で一般的に『認識』されていない。
この能力を本当に存在しているものとして知るのは、『神殿』と『皇家』だけだ。
秘匿されているのだろう。

300年程昔、『能力(ギフト)』は気軽に調べることができたし、人々もそういうものがあると認識していた。

だが、悪い人はいるもので。


能力(ギフト)』を持つ者を誘拐し、私利私欲の為にそれを使わせる輩が、皇族・貴族・裕福な民に、相当数いたそうだ。

能力(ギフト)』は、言い換えれば『神の祝福』だ。
ごく限られた人に与えられる、特別な能力。

だから、この状況は、神の怒りに触れた。

『神の怒りに触れ、人々は能力(ギフト)を取り上げられた』と、皇家の歴史書の中にあった。勿論禁書である。

うーん…練り上げられてるな。
ラノベの作者さん、やり過ぎです。抜け道が無いじゃない。

「聖女が、『魅了』の『能力(ギフト)』を持つということを皆に知らせて、注意を促すのは、現実的ではない、わね……」


私は、誰に聞かせるでもなく呟いた。

聖女には特別な能力があるよ、皆に自分を愛させる能力だよ、と言ったところで、そんなの個人的な心の動きじゃないか、ということで終わってしまう。
『神が与えた大きな力』だと言ったところで、秘匿情報を公開した罪に問われるのは私だ。

では、皇家の皆様に注意を促すのは?

……やってはみるけど、その危険性とスタンピードを秤にかけたら、秒で魅了の危険性は排除されるだろう。

『好意を持たせる』だけだというのも厄介だ。
危険性を証明するのが難しい。
例えば、エドウィンに言ったところで、「私の心はそんなに簡単に動かない」と言って終わりだろう。


となると、やはり。
私は、逃げ道を準備しないといけない。
独りの力で生きていけるよう、今の状況を利用して、今できる、最大限の準備を———




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