とあるヒロインと悪役令嬢の顛末〜悪役令嬢side

しあわせの在処 ~エピローグ~





マーガレットが目覚めたのは、眠りについてから8ヶ月後のことだった。

目覚めてすぐは、体調を整えるためという名目で、エドウィンから離してもらえなかった。

寝室の外に出られるようになったのは、目覚めから1ヶ月後。

「眠っている間は時々会わせてくれたのに、起きたら会わせて貰えないのはどういうことですの?」

カティの黒い笑顔の問いに、エドウィンは渋々蒼星の会のメンバーとの面会を認めたという。

その2ヶ月後、妊娠が判明。
ミクに会いに行こうとした矢先だった。
初産であることを理由に各所から長旅を認められず、出産後に会いに行くことになる。
マーガレットのたっての希望で、何かあればすぐに助けられるように、ミクの部屋の隣に冒険者の剣士アダムが住むことになった。魅了にかからないだろうから、という人選である。

結婚式はその1ヶ月後に控えていたが、悪阻など一切なかったので、儀式を短縮してそのままの日程で行われた。

結婚式の前々日に行われた蒼星の会のお茶会で、マーガレットの侍女は、『さすが(ドラゴン)、母体を守る力があるのね』という謎の会話を聞いたという記録を残している。

帝国民は、皇太子の結婚と皇太子妃の妊娠の知らせに沸く事になったが、神殿から、「お産まれになるのは『(ドラゴン)の加護』を持つ『皇子』」と発表され、更に熱狂の度を増した。

その半年後、元気な男子を出産。カールと名付けられた。
エドウィンに良く似た、金髪蒼眼。
産後の肥立ちも絶好調に良く、マーガレットは出産1ヶ月後にミクに会いに行っている。

生後半年頃、子どもの顔を見に来たミクに「イケメン…!推せる…!」と言われて、マーガレットは爆笑したとかしなかったとか。

カールの乳母は、同時期に出産したカトリーナが務めた。

1歳足らずで言葉を話し始め、周囲を質問攻めにし続けたカールは、100年に1人の天才と言われている。


そしてミクの来訪後すぐ、マーガレットに第二子の妊娠が判明。つつがない妊娠期を過ごし、また元気な男子を産む。
こちらはローラントと名付けられた。
この子は、金髪翠眼。顔立ちはエドウィンに、目はマーガレットに似た。

とても活発な皇子で、乳母はイェーナ。
イェーナ曰く、『脅威の身体能力』。
「いずれ騎士にする」と、エドウィンとマーガレット以上に気合いを入れて、自分の息子たちと共に『鬼ごっこ』で鍛えているらしい。
アルバート曰く、「あれはもはや魔獣狩り」だそうだ。


その後も10年の間に、三男ルーク、長女ローズマリー、次女ジャスミン、四男フィリップと、子宝に恵まれたマーガレット。
こちらは、やはり同時期に出産したイザベルが全員引き受けた。

イザベル曰く、「人間なら大丈夫ですわ」。
その意味は不明とされる。

アンナマリーも乳母をやりたがったが、王国の王弟妃となったので不可能だった。

代わりに、頻繁に帝国に子ども連れで『外交』という名の『遊び』に来ては、「ウチの子の誰かと、メグの子の誰かを結婚させる!」と息巻いている。
皆帝国に戻ったので、相当寂しいらしい。



結婚して12年経ったマーガレットだったが、まだまだ産まれそうだったので、流石に避妊魔法をかけてもらったようだ。

「本当にウィンって○○○○で○○○○(自粛)んだから‼︎」
と、蒼星の会で訴えたとか。
因みに、その場で『他の全員の夫も”そう”』だということが判明したらしい。

愛情深い父母のもとで育った6人の子どもは、それぞれの個性を伸ばしてすくすくと育っていった。
兄弟仲がとても良く、特に上の2人は、弟妹をそれは大切にしたという。



今日も、皇宮の庭園を仲睦まじく歩く夫妻の足元を、年少の子ども達が駆け回っている。
上の子たちは、小さな弟妹が怪我をしないよう、フォローに余念がない。


「レティ、愛してるよ」
髪にキスを落とす夫に、何年経っても若々しい妻は、満面の笑顔で答える。

「私の方がもっと愛してるわ、ウィン」


春の柔らかな風が、優しく一家を包んでいた————




       fin


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