GIFT
“救急車”と一瞬思ったが、もし大きい病院に運ばれて検査が繰り返し行われたら…

医療機器が何の反応も示さず、検査結果が出なかったら…

それよりも、葵の体の防衛機能が働いて医療機器を破壊するような事になったら…

そんな事を考えると恐くて呼べなかった。

とりあえず、大橋医院に電話をすると、診察時間は終わっていたのに先生は「直ぐに連れて来い」と快く受け入れてくれた。

そして遥香を母さんに見てもらっている間に、葵を僕の車にのせて大橋医院に向かった。

病院に到着し、葵を診察室まで運ぶと、大橋先生に廊下で待っているように言われた。

それから診察は30分にも及んだ。


ガチャ…

大橋先生が診察室から出て来たのでイスから立ち上がると、先生は僕の隣に黙って座った。

「先生…葵は?」

「瑛太、お前…彼女に何をやらせてるんだ?」

「何って?」

「彼女、相当やばいぞ」

「もしかして何か悪い病気にでもかかってるんですか?」

「病気じゃねえよ」

「よかった…。それなら何なんですか?」

「体がボロボロなんだよ。体は衰弱してるし、内臓なんかも弱りきってる。どうしたら、あんなになるんだ?」

「・・・・・。僕が見てる限り、普通のお母さんと変わらないと思います。只、頑張り屋なので、僕の見てないところで無理をしてるのかもしれません」

「お前…家の事とか赤ん坊の面倒とかやってんのか?」

「もちろんやってますよ。フロ掃除とか洗い物とかゴミ捨てなんかも…もちろん育児もしてます」

「だったら何であんなになっちまうんだっ」

大橋先生は何故かムキになって怒っていた。

「わかる訳ないですよっ」

大橋先生の態度にムカついたので、素っ気ない態度で答えた。

「おいっ」

「何すかっ」

「確か彼女…能力者とか言ってたな?」

「はい…」

「以前に、彼女を運び込んで来た時があったが、確か能力を使い過ぎてしまった為に体力の限界を超えたとか言ってたな?」

「そうですけど…」

「なるほどな。能力を使い過ぎると命の危険にさらされると言う事か…」

「でも、今までとは様子が違うんです」

「物だって、ずっと使ってれば壊れちまうだろ。そして壊れたら直す。でも物にも限界があって、いずれ直す事すら出来なくなっちまう。今の彼女の体がそれと同じなんだよ」

「それじゃあ、葵の体は治せないって事ですか?」

「あぁ…。瑛太、今のうちから覚悟しとけ…」

「・・・・・」

「それと彼女「瑛太…ゴメンね」って、何度も言ってたぞ」
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