GIFT
そんな事があったせいで僕と亜季ちゃんの関係は何処かぎこちなく気まずかった。

それが理由で亜季ちゃんは、あまり僕らには会いに来なかったのかもしれない。

それに僕と葵の夫婦姿を見るのが嫌だったのかもしれない。

それは僕も同じで、そんな僕らの夫婦姿を亜季ちゃんには見せたくなかった。

「亜季ちゃんが今外国で何をしてるか知ってる?」

「そっ‥それは…」

「何?」

「小学校の先生をしてるって聞いた事があります」

「先生か…。でも、何でわざわざ給料が安くて仕事のキツイ教師になろうとなんて思ったんだろう?」

「前に聞いた話だと、日本の高校に転校した時に大変お世話になった先生がいて、その先生に憧れて教師になったとか…」

「どんな先生だって言ってた?」

「口が悪くて暴力的でメッチャ怖くて…でも、とっても生徒思いで情熱的で良い先生だったと言ってました。誰だかわかります?」

「もっ‥もちろん、わかるよ…」

そんな先生は1人しかいない。

葵は何かと相談にのってもらったり、自分の能力の事を打ち明け、比較的自由に人助けをさせてもらっていた。

プライベートでも、先生の家に泊まりに行ったり、食事に連れて行ってもらっていたようだ。

でも亜季ちゃんは5組だったから、松下とはあまり接点はなかったはず…。

もしかしたら、僕の知らない所で面倒をみてもらっていたのかもしれない。

「何て先生ですか?」

「松下って言うんだ。でも何でだろう?亜季ちゃんは、まつしっ‥」

「そっ‥それとですね、その先生は担任ではなかったけど、葵お姉ちゃんと先生が仲が良かったのをキッカケに亜季お姉ちゃんも親密な関係になっていったそうですよ」

「やっぱりそうだよね…。それなら納得が出来るよ」

「わかってもらえて良かったです」

茉奈ちゃんは小さく息を吐くと安堵の表情を浮かべていた。

「亜季ちゃん、向こうで頑張ってるんだね?」

「はい。安心しましたか?」

「そりゃそうだよ。向こうに行ってから、亜季ちゃんは僕には何も教えてくれないんだから…」

「紺野くん、亜季ちゃんの事まだ好きなの?」

「好きというか、1度は想いを寄せ合っていた訳なので気になるというか…心配というか…。っていうか何を言わせるんですかっ」

美咲さんのストレート過ぎる質問に、ついうっかり答えてしまった。

「ふ~ん…」

美咲さんは目を細め、疑いの目で僕を見ていた。

「あのぉ…もしかして、お2人はそういう関係なんですか?」

「違うって」
「違うって」

茉奈ちゃんの質問に僕と美咲さんは2人同時にそう言った。

「息合ってますね」

「そんなんじゃないからっ」
「そんなんじゃないからっ」

まただった。

「ふ~ん」

茉奈ちゃんは僕らを見てイタズラっぽく微笑んでいた。
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