離婚前提から 始まる恋
「花音はまだ若いんだし、やりたいことだってあるだろ?」
「やりたいことねえ・・・・」

恥ずかしい話、私は自分の人生に夢がない。
小さいころから欲しいものは何でも与えられ、何不自由なく育ててもらった。
そのせいか物欲もないし、取り立てて秀でたものもない私には出世欲もない。
ただ穏やかに、家族のために生きたい。
これっておかしいのかなあ。

「お義父さんの次の選挙が終わったら・・・」
「終わったら?」
その先を聞くのが怖くて、私は目をそらした。
「離婚しようか?」
「えっ」

今日は結婚式の日だよ。
そう言いたくて言えなかった。

次の国政選挙は、おそらく一年後か長くても二年後。
それが終わったら、離婚しようと言う勇人。
きっと、ご両親の言うことを聞いて一度結婚すればそれでいい。その後はどうなろうとかまわないとでも思っているのだろう。
もしかしたら、私と離婚後に里佳子さんと一緒になるつもりかもしれない。

「遅くとも2年目の結婚記念日までにはと思うけれど、どう?」
「うん。わかった」

なぜだろう、全然納得できないのに、私は頷いてしまった。

***
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