離婚前提から 始まる恋
乗せられたのは、大きくて広いセダンタイプの車。
父の専属運転手と助手席に風間さんが乗り私は後部座席へと座った。

本当なら乗り込んだ瞬間から横になりたかった。
倒れ込んで目を閉じてしまいたかったけれど、そこは多少の羞恥心が働いてお行儀良く座る。

「ご自宅までは二時間ほどかかりますので、横になっていらしてください」
「いえ、大丈夫です」

子供じゃないんだから、そんなみっともない姿は見せられない。その一心で座っていた。
けれど・・・

「真っ青な顔をしておいでです。遠慮なく横になってください」
風間さんの一言で、我慢の限界を迎えた。

私が無理をすればおなかの赤ちゃんも苦しいのかもしれない。
そう思うと自然と体を横たえていた。

しばらくして、私は眠ってしまったらしい。
心地よい振動の中で私はまどろみ、短い夢を見た気がする。

その夢の中で、私と勇人は手を繋いでいた。
そして、私とつないだ手の反対側に抱えられた小さな男の子。
楽しそうに微笑む勇人と空を指さしながら一生懸命に話す子供。
絵に描いたような幸せな家族がそこにはあった。
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