離婚前提から 始まる恋
「それで、体は大丈夫なのか?」
「ええ」

どんなに怒っていても、暴挙に出ても、私の体調を気遣ってくれるのはやはり親。
そう言う意味で父のことを本心から嫌いになることはできない。

「体調が悪いようなら先生を呼ぶから言いなさい」
「はい」

昔からこの土地に住んでいる我が家にはホームドクターがいて、風邪をひいて寝込んだ時にはいつもに来てもらっていた。
私のことも子供の頃から知っているおじいちゃん先生だから気兼ねはないけれど、今回は原因が妊娠による悪阻とわかっているから、できれば診察は受けたくない。

「勇人君がもうすぐこちらに来るそうだ」
「えっ」

父か母かはわからないけれど、私を実家に連れ戻したことは勇人に知らせたはず。
そうなれば勇人が実家に来るかもしれないと、覚悟はしていた。
でもなあ・・・

「お父さん、勇人に何を言うつもりなの?」

普段から威圧感のある父は、普通に話していても怒っているように聞こえる。
こうして私を無理やり連れ戻したってことはかなり怒っているのだろうし、勇人との会話が穏やかに進む気がしない。

「何も言うつもりは無い。逆に、なぜこうなったのかを勇人君に聞きたいだけだ」

それに対して、勇人はなんて答えるんだろうか。
なんだか、かわいそうだな。
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