プラトニック ラブ
二人の壁

会いに来た冴木




ーー留学日の6日前の金曜日。

翌週の月曜日は卒業式の為、事前準備もあり在校生は午前授業に。


菜乃花と一緒に下校中の紗南は、校門を通過したと同時にある女性に呼び止められた。



「福嶋 紗南さん」



女性の声は周囲の雑音に紛れる事もなく、不思議なくらいストレートに耳に止まった。


落ち着いた口調には聞き覚えが。
今や忘れもしない印象的な声。

しかし、残念な事にいい記憶がない。



紗南は後方の女性の方へと振り返ると、同じく反応した菜乃花もつられて振り返る。



紗南は女性と目が合った途端、背筋がゾッとした。




上下杢グレーのスカートスーツに、スカイブルーのワイシャツ。
左肩には大きめの黒いビジネスバッグ。
髪型は肩までのワンレンボブヘアー。
黒いレザーのヒールの低いパンプス。




ーーそう。

一見キャリアウーマン風の彼女は、彼の専属マネージャーの冴木さんだ。


つい数週間前に保健室前の廊下で会ったばかり。
忘れもしないほど強烈なインパクトを与えてきた人物である。

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