プラトニック ラブ
紗南の気持ち
ーーいま彼に嘘をついた。
別れたいなんて本望じゃない。
本当は別れたくない。
傍に居たい。
でも、自分が彼の未来の足かせになってると知った以上、離れていくしかない。
初めて冴木さんに警告された時は、何とか切り抜けられる方法があるんじゃないかって思ったりもしたけど…。
今はもう考え方が180度違う。
私は彼の隣にいてはいけない人間。
自分が去れば、彼が日本への心残りは消えるんじゃないかって。
出国までの残された時間で気持ちが大波のように揺れ動いてた、その時。
私は冴木さんから彼とお別れのチケットを受け取った。
昨日、冴木さんとの別れ間際に手渡されたメモ。
そこには、日時と場所だけが記載されていた。
ーーそう。
逆読みすると、私が彼と別れる前提で今日という日がセッティングされていた。
冴木さんとの間でそんなやりとりがあった事さえ知らない彼は、私がジュンくんに頼んで会えるようにセッティングしてもらったと思い込んでいた。
私自身も、彼が口にするまでジュンくんが間に携わってる事を知らなかった。
冴木さんは予想以上に用意周到だ。
ジュンくんから呼び出せば、彼は何の疑いもなく視聴覚室に足を運ぶ。
そして、間に冴木さんが関わってる事を知らずに済む。
悔しいけど、これが仕組まれた罠だとわかっていても、気持ちを反転させる事はない。
何故なら彼をアメリカに送らなければならないから。
残念ながら、これが今の私に出来る役割。
嘘は心苦しいけど、彼の将来と思って割り切るしかない。