プラトニック ラブ
タイムリミット
「話は終わったから教室に戻らないと……。朝のHRが始まっちゃうからもう行くね」
紗南は席を立つと、表情を隠しながら早々と左通路に出てセイの元から離れた。
瞳に用意されている次の涙は、気付かれぬように手の甲で拭う。
猛烈なショックを受けたセイは、紗南の足音を背中から浴びている状況に。
ぼんやりと瞳に映る光景は、情報として脳まで到達しない。
学校に滞在できるタイムリミットは11時。
残り3時間を切った。
その中でも2人きりで話せるチャンスは、今この瞬間しかない。
気持ちがすれ違ったまま別れる訳にはいかなかった。
最後の最後までしっかり話し合わなければ⋯⋯⋯。
セイは残された僅かな時間に望みを託した。
机にバンッと手をついて勢いよく立ち上がった後、急いで紗南の後を追った。
「紗南!」
紗南の背中を視界に収めて名前を呼ぶが、紗南は振り向くどころか、通路を真っ直ぐに駆け抜けて行く。
セイは無我夢中で走り、紗南との距離をあっという間に縮めた。
「ちょっと待って。まだ話は終わってねぇし」
「もうこれ以上の話なんてない⋯⋯」
セイは後部座席付近で追い付くと、思いっきり伸ばした手で紗南の腕をグイッと掴み上げた。