プラトニック ラブ

想いの強さ



「……どして?」



菜乃花は首を傾げて問う。



「私ってひとりっ子だし。それに、好きな人を追いかける目的で留学するのはさすがに気が引けるよ」

「えーっ、一緒に行けばいいのに。もし私が紗南みたいなお金持ちの家の元で育ったら、一瞬の迷いもなくハルくんを追って留学するのに」

「あはは、菜乃花らしいね」



いつも一途にハルくんだけを想う菜乃花が時に羨ましく感じる。
実際は、自分が後先を深く考え過ぎているだけなのかもしれないけど。



「でも、彼が2年間もアメリカに行っちゃうなんて寂しいね。まだ付き合って間もないのに……」

「うん、でも影でもいいから応援してあげないと。私もファンの一員だしね」



紗南が逞しさを見せると、菜乃花は想いの強さに感銘を受ける。



「偉いなぁ。彼の事だけじゃなくて両親の事も考えているなんて。私だったら、意の向くままに行動しちゃうけどね」



昨日は1人きりで思い悩んでいたけど、やっぱり共感しながら話を聞いてくれる人がいるのは心強い。
菜乃花のお陰で少し気が晴れてきた。





紗南達が留学話をしながら東門に向かって歩いていると、家庭教師の一橋が門の前で腕を組んで立っている姿を目撃する。

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