溺れるくらいの恋を…君に
ドン━━━━━!!!!

思わず、百合愛は冬臣を突き飛ばした。

「あ……百合愛…ちゃ━━━━」
「こんなの、おかしい!」

「百合愛ちゃん…」

「私は!水瀬くんが好きです!
ごめんなさい…ごめんなさい……」

百合愛は頭を下げ、駆けていった。


はぁはぁ……
息切れをしながら、あてもなく走る。

そしてピタッと止まり、その場にへたりこんだ。

百合愛の頭の中は、ぐちゃぐちゃだ。
あっという間に瞳が潤み、涙が溢れてくる。



水瀬くんに、会いたい━━━━━━━━



百合愛はスマホを取り出し、水瀬に電話をかけた。

『もしもし?百合愛?』
「………っ…」
水瀬の声を聞くだけで、更に涙は溢れてくる。

『百合愛?どうした?
ごめん、今から会社の奴等と話し合いでさ!
後からかける!ごめんね、寂しい思いさせて』

「会いたい……」

『え?百合…愛…?』

「会いたいの、水瀬くん!」

『………』

「会いたい…会いたいよ……」

『百合愛』

「え?」

『会社に来て』

「え?」

『いいから。
会社に着いたら、また連絡して』

百合愛は、また走りだし水瀬の会社に向かった。


周りはもう真っ暗で、百合愛は水瀬の会社を見上げた。
そして、水瀬に電話をかける。

“すぐ行くから”
そう言われ、待っているとエントランスから水瀬が出てきた。

「水瀬く………」
「百合愛!!」

水瀬は、百合愛の様子を見て切なく顔を歪めた。
「どうした?ん?」
頭を撫でながら問いかける。

「ごめんなさい…ワガママ、言って…」
「ううん!百合愛なら、大歓迎だよ!」

「さっき、冬臣くんに会ってたの」

「は?」
水瀬の頭を撫でる手が止まる。

「プールでのこと、謝りに来てくれた」
「そう…」
「それで、プレゼントを買うのにアドバイスしてほしいって言われて駅ビルに行った。
水瀬くんの友達の頼みだから、断るの失礼かなって思って」

「へぇー、誰へのプレゼント」

「好きな人って言ってたけど……
そ、それでその後……」


言いにくそうに言葉を濁す百合愛に、水瀬が淡々と言った。




「告白されたんだろ━━━━━━?」

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