一番前の席のあなたを

私にバレンタインデー!?

2月の行事といえば?



そう!バレンタインデー!!


でも、私は、あげる人はいないのだけれど…。


友チョコとして、あなたにあげられるチャンスだと思うけれど
でも、挨拶くらいしかしないのに
いきなり友チョコあげる!!なんて言えないよ……。

きっと、びっくりして引かれるもの…。



なんて、思いながら
結局、なにも持たずに学校に登校した。


周りの男子たちは、髪の毛をワックスで決めていたり、いつも遅刻する生徒が今日は遅刻していなかったり、
みんな、バレンタインデーを気にしているようだった。


実は、バレンタインデーは、女性から告白するものではなく、
男性が愛の告白をする日なのだそう。


それに、食べ物は持ち込み禁止の校則があるにも関わらず、
この日だけは、なぜか、教師も甘いのである。


なんて、心で呟きながら、微笑みながら席に着いた。


あなたは、席に座って友達と話しているようだった。



『あなたは、今日、誰にチョコを上げるの…?』
『やっぱり、好きな男の子にあげるのかな…。』



なんて、寂しく思いながら、
あなたの笑う横顔を眺めていた。

ボーッとしていたら、
あなたに名前を呼ばれた気がした。


「松川さん。」
「松川さん…。」
「あのさ…。」



「ん…?」
私が、あなたの顔を見る。



「あの…。
松川さんって、チーズ食べられる?」


「えっ?
あっ。
うん!」



「じゃあ。
これ…。」
手には、淡い色をした包み紙を持っていた。
「作ったんだ。」
「あげる。」

私の手に、淡い色をした包み紙の物を渡した。


「えっ…?」
「いいの?」
「ありがとう。」
私は、嬉しくて微笑んだ。


その淡い色をした包み紙をそっと撫でて
鞄の中に入れた。



あなたの友達が、あなたの席に近づいて、
あなたに
「渡した?」
って聞いているのが聞こえた気がした。

「うん。」
あなたは、微笑んでうなずいた。

私は、家に帰って、
今日、あなたにもらった包み紙を広げた。



ふわふわしたチーズケーキがひとつ


とても美味しかった。



『後で、お返ししようっと。』

嬉しい気持ちで、レシピ本を眺めた。




『あれっ……。
でもどうして、私にくれたんだろう…。』
『あまり、話したことなかったのに…。』
『席が近いからって、あまり話したことのない人にあげることあるのかなぁ…。』


私は、貰って嬉しかったけど、
そんな事ってあるのかなぁ。


そんなことを思っていた。


次の日、
「おはよう。」

「おはよう。」


「昨日のチーズケーキどうだった?」
みずきちゃんが聞く。



「すごく美味しかったよ。」
「ありがとう。」

「あの…さ。」
昨日のことを聞こうとした。


「ん?」


「あっ…。
ううん……。」
「なんでもない…。」

結局、聞けずにいた。

私は、自分の席に着く。


『そういえば、みずきちゃんの好きな人の話って聞いたことないな…。』
『すごく、綺麗だし、彼氏いてもおかしくないのに…。』
『それに、あの人カッコいい!とか気になるんだよね…。とか聞いたことないな…。』


中学っていう場所では、毎日のように、
誰々が好き。アイツとアイツ付き合ってるんだって~。とか噂があったり、
昨日好きな人が夢に出てきたんだとかそんな話を聞いたりするものなんだけれど。


『好きなタイプとか話をしているのも見たことなかったなぁ~。』

ただ、あなたの笑った顔と声しか耳に届かなかった。

< 6 / 12 >

この作品をシェア

pagetop