一番前の席のあなたを

あなたのそばに

次の日曜日、私は、あなたの家に遊びに行った。


初めてだった。
友達の家に行くことが。


ショートケーキを持っていくことにした。


『どんな洋服を着ていこうかなぁ。』


『あっ!』
『これにしよっと。』
白いブラウスと花柄のスカートを選んだ。



私の家から、少し離れた距離に
あなたの家があった。


緊張しながら、チャイムを押す。



「は~い。」

聞き慣れた声がする。


ドアを開けると、あなたが迎えてくれた。


私は、ホッと笑顔になり

「お邪魔しま~す。」

「どうぞ。」


「あっ。
これ…ショートケーキ。」
顔の前までショートケーキが入った箱を持ち上げた。



「うわぁ。」
「美味しそう!!」
「早速、食べよ!!」


あなたが、私の手を繋いで
あなたの部屋へと案内してくれる。


ショートケーキがのったお皿が2枚、ミルクティーが綺麗な絵が入ったマグカップに注がれた。


私たちは、一緒にショートケーキを食べる。


「ねぇ、りかは、ショートケーキに、乗ってるイチゴって、
いつ食べる?」

「ん~、私は一番最初かな。」
「みずきちゃんは、いつ食べるの?」
「最初?最後?それとも?」


「わたしはね、イチゴは最後に食べるかなぁ。」

「でも……。」

「ん?」
私が、あなたの顔を見る。


「一番大切な人は、一番最初に食べるかなぁ。」

そう言って、私の髪の毛を撫でた。



そして、顔が近づいてくる。
唇を重ねた。
イチゴの味がしたような気がした。


そうして、すぐそばにある
ベッドに流れ込んだ。


私が寝転んだ瞬間に、スカートがめくれ上がった。


すると、あなたは、愛おしそうな目で、私を見た。

そして、また、キスをした。
深く、息の出来ないようなキスを…。


スカートに手をかけ、私の大切な部分に、あなたの指が、ぎこちなく動いている。


私は、
あなたのTシャツに手を伸ばす。


ふわふわとしているそれは、可愛いピンク色をしていた。
まるで、マシュマロを触っているようだった。


あなたは、私のブラウスのボタンを上からはずしていく…。

そして、両手で優しく触っていく。


私たちは、私たちしか居ないのをいいことに、肌があらわになった姿で、色んな部分を重ねた。



「あっ……。」

荒い息づかいが、静かな部屋に響いた。



「あっ……。ダメ………。」

「イキそう……。」

「いいよ……。イって………。」


「あっ……。い……。」
「あっ……。みずき………。」


体が小刻みに震える。


「はぁ……。はぁ………。」


ふたり見つめ合って、笑った。


そして、またキスをした…。

汗ばんだ体を起こしながら、

「やっと、呼んでくれたね。」
嬉しそうに、私を見た。


「…うん……。」
ちょっと、照れながら返事をした。



「ンフフ」
「嬉しいよ。」
「呼んでくれて。」
手を絡める。


その後、一緒にシャワーを浴びた。


同じシャンプーの匂いがする。


一緒に髪の毛を乾かす。



洋服を着ているとき、あなたはベッドに腰掛け

「この事は二人だけの秘密だね。」


まだ、頬がピンク色をしている顔で微笑みながら言った。


「だね。」
私も、口元に指を当てながら話した。




「ねぇ、りかの描いていたキャンバスって、今もあるの?」


「ん?」
「うん。あるよ。」
「完成してからずっと、渡したかったんだ。」


「その絵さ…。」
「わたしに、プレゼントしてくれない?」


「えっ?」


「わたしたちは、これからもずっと一緒だよ。」
「ただ、りかの描いた絵を見てみたい。」
「それに、大切な人が描いてくれた絵を大切に持っていたい。」


「いいでしょ?」
私の顔を覗いた。


「うん。いいよ。」
私は微笑んで、あなたの唇に視線を置いた。


「約束ね。」
私が、あなたの唇にやさしくキスをした。


「うん。約束ね。」
あなたが私に、キスをした。

「じゃあ、帰るね。」
私が、玄関の所で言う。


「うん。また、明日、学校でね。」
あなたが、手を振る。


「あっ!」
「ちょっと待って!」
あなたが言う。


私は、振り返った瞬間
唇が重なった。



あなたは、満足そうにしていた。


私は、それが、愛おしくて、微笑ましかった。



「またね。」
手を振る。


あなたは、私が、角を曲がるまで
ずっと手を振ってくれていた。


朝、教室に着くと
もうあなたは、教室にいた。
私たちは、挨拶を交わすと
少し照れたようにはにかんで
顔を下に向けた。



あの事があってからも、私たちは、学校ではいつもと変わらない関係を装った。



きっと、他から見れば、
ただの友達のように写っていただろう。



私たちも、学校の中では、友達のように振る舞った。


きっと、深い関係にあることをみんなに知られればきっと、拒絶されるに違いない…。



女と女が好き同士になって、
キスもそれ以上の事もしているなんて、異性を好きな人には
到底理解の出来ない事だろうと思ってしまったから…。



まだあの頃は、
私たちは、周りの目が気になってしまっていたから…。

放課後、教室にふたり。


椅子に座り、手を繋ぐ。


窓から見える夕日を眺めながら

「もうすぐで、卒業だね…。」
寂しそうにあなたが言う。

「うん…。」


「卒業したら、高校は別々になっちゃうんだよね…。」


「うん…。」


「高校に行っても、わたしたちは変わらないよね?」



「うん。」
「当たり前でしょ。」
微笑んで、あなたの顔を見る。


ホッとした顔をして、私の肩に頭を乗せた。


「よかった~。」
あなたが微笑む。



「りかは、携帯持ってる?」
あなたが、上目遣いで私の顔を見上げた。


「ううん。」
首を横に振る。
「持ってないよ。」



「な~んだ…。」
「持ってないのかぁ…。」
少し残念そうな顔をあなたはした。


「じゃあ、買ったら教えて!」
「一応、わたしのメールアドレスと電話番号教えておくから。」
メモ帳に電話番号とメールアドレスを書こうとするあなた。


「いや…っ。」
「やっぱり…みずきの家の住所だけ教えて。」
とっさに、あなたの右手を掴んだ。



「えっ…?」
驚くあなた。


「あの…。」


「あのさ…。」
「私…。」
「みずきとの関係、いつまでも続けていたいから。」
あなたの目をしっかり見て、両手を握った。

「ただの、薄い関係で終わりたくない。」
「もし…アドレスが変わって、連絡取れなくなったら、私…。」
「ものすごいショックを受ける。」

「初めて、こんなに好きな人が出来たのに。」
「もう、一生、知らない人になるのなんて嫌だよ…。」
私の目から涙がこぼれた。


あなたは、私の顔を覗いて
柔らかいあなたの手が、
涙で濡れた頬を優しく拭った。

「そんなこと、あるわけないでしょ!」
「薄い関係なんて、あるわけない!」
「わたしたちには、そんな言葉なんて似合わないよ。」
あなたが、力強く話す。


そして、私の顔を見て、優しい声で
「わたしは、りかに出会えて本当によかったよ。」
「これからも、もっと、
りかのことを知っていきたい。」
「これからも、ずーっと。」
「この気持ちに嘘はないわ。」
そう言って、私にあなたは、微笑んで、優しくキスをした。

そして、私たちは、お互いの家の住所をメモ帳に書いて渡した。



そして、ふたり
手を繋いで、学校の校舎を出た。





『あなたに、出会って、深い関係になって、こんなにも、穏やかな気持ちは初めてだよ。』
『もっと、もっと、長い間こうしていたかった…。』

そう心の中で呟きながら、
私の膝枕で可愛らしい寝顔をしてるあなたの髪を撫でた。



私とあなたが、前の挨拶をする仲ではなくなってから、
こんなに深い関係になったのは、
たった1、2週間の出来事だった。


「みずき…。」
「あいしてる…。」


そう呟いて、あなたの髪を優しく撫でた。

生徒が、制服に赤い花をつけている。
卒業式を迎えた。


生徒達が、卒業証書を片手に、校舎の外へと集まっている。

泣いているものやハグをしたり、写真を撮り合っているものもいる。



私とあなたは、美術室に向かった。


静かな空間に、ふたりの足音が響いていた。



私は、美術室の画材が置いてある所に向かった。


手には、キャンバスを持っている。



キャンバスを両手で持って
あなたに差し出す。


「はい。」
「あげる。」


「ありがとう。」
あなたは、両手で受け取った。


嬉しそうに、その私が、描いたあなたの絵を眺めている。



「この絵、わたし?」
嬉しそうに、私を見た。


「うん。」
私は照れながらうなずいた。


「嬉しい。ありがとう。」
「この絵、もしかして、ずっと渡したかったあの絵なの?」


「うん。」
「中1の頃から、ずっと渡したかったけど、ずっと渡せてなかった絵…。」


「そうだったんだ。」


「でも、渡せてよかった。」

ふたりは、微笑んだ。


そして、窓から見えていたふたりの姿は、消えていった。



私たちは、美術室の硬い床になだれこんだ。
固くて、冷たい床が、私の背中にひんやりと当たる。


「んふふ」
私たちは、また愛し合った。


初めてした時以上に、深くもっと愛し合った。


冷たい床が
まだ、火照ったからだを
冷ましてくれる。



私たちは、乱れた制服を直した。


お互いのリボンを直すように。



そして、ふたりで抱き合った。


あなたは、すごく泣いていたね。


抱き合ったあなたの温もりと、泣いて震えるあなたのからだを
私は、いつまでも抱き締めたいと思った。



私は、そのとき、あなたが、私の制服のポケットに
あなたの電話番号を書いたメモ帳をポケットに入れているのを知ったのは、私が、家に帰ってからだった…。

そして、家に入る前に
私は、あなたを抱きしめた。


「ずっと、あいしてるよ。」


「わたしも、りかをずっとあいしてる。」


そう言って、家に入るあなたの背中をずっと見ていた。



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