green mist      ~あなただから~

幸せと不安

 ~香音~

 寝室のベッドで寝なさいと言われた。彼は、飲みかけのコーヒーを持って、また、書斎へと戻って行った。

 ソファーで寝るつもりだったし、もう一部屋ある事も確認済みだ。
 どうしよう……
 寝室と言われたし、取り合えず行ってみることにした。


 そっと、彼に指示された寝室のドアを開けた。一人で寝るには広いベッドの他に、余分な物は何もない。ウォークインクローゼットの扉の前に、小さなテーブルとイスがあるだけだ。


 軽く座ってみるが、私のシングルベッドとはだいぶ違って、スプリングも厚くてしっかりしている。

 ちょっとだけと言い聞かせて、ベッドの上に横になってみた。

 わー、気持ちいい。もうすぐ終わるって言っていたけど、どのくらいだろうか……
 眠くなってきたな……



 うーん?
 
いつの間にか寝てしまたようだ。カーテンの隙間から光が漏れている。まさか、彼は徹夜したのだろうか? 体を起こそうとして、自分が布団の中にいる事に気付いた。

 まさか……

 首だけを横に向けると、すー、すーと寝息の主が見えた。眼鏡を外した顔を見たのは初めてだ。なかなかの整った顔だ。そっと、体ごと横に向けて、彼の髪に触れてみた。やわらかくて、上げた髪の下か見えた寝顔が優しくて、幸せだと思ってしまう……


 ふふっ。このまましばらく見ていようかな?


「そんなにじっと見られていると、寝ているのも限界なんだけど……」

「げっ!」

 やば、起きていたんだ……


 彼の髪を触っていた手を、引き戻そうとするとガシッと腕を掴まれた。そのまま、グイっと引っ張られたと思うと、彼の顔が上にあり、私の体はしっかりと組み敷かれていた。

 彼と目が合う。
 そして、唇が重なった。

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