たとえ星が降らなくても【奈菜と南雲シリーズ③】
一瞬のことだったから、きっと誰にも見られていない。そもそも週半ばの火曜日。遅めの時間帯もあって、人はまばらだ。

「な、な、な、……」

目を大きく見開いた彼女の顔が、夜の歩道の灯りでもはっきりと分かるほど赤く染まっていく。
恥ずかしさのせいか、真っ赤な顔で俺をじろっと見上げてくる奈菜。
その顔にやられるんだって!狙ってやってんのか!?そんなわけない。ハチだもんな。
必死にそう自分に言い聞かせるしかない。

はぁっと腹から息をついて、もっと深く奪いたくなる衝動を逃がした。

「そろそろ行こうか。電車が無くなるぞ」

立ち止まったままの彼女をそのままに、先に歩き出した俺の後ろから、奈菜が小走りで追いついてきた。

「南雲」

「ん?」

「南雲」

「なに?」

「来年は一緒に星、見れたらいいね」

思わず足が止まる。
それって、来年も俺と一緒にいたいってことだよな?

「……晴れたらいいな。来年の七夕」

「うん!」

笑顔で頷いた彼女の後ろで、シャラリと星が音を立てる。
彼女の髪で光る星を見ていた俺のシャツの袖口を、彼女が少しだけつまんで引っ張った。

「どした?なんか忘れたのか?」

「ちっ、……ちがうもん。そんなにいっつも忘れたりしないし」

「じゃあどうした?」

首を傾げると、奈菜が伸びあがって俺の耳の近くに口を寄せてくる。立てた片手を添えているから、内緒話なのだと思った俺は、奈菜の方へ頭を傾けてやる。

「あのね、もうそろそろ、雨上がるんだって。だから………」

言いにくそうに一旦口をつぐんだ彼女は、思い切ったように俺の耳元で囁いた。

「南雲、ベガとアルタイル、今夜一緒に探してくれない?」
< 11 / 12 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop