あと5分!【奈菜と南雲シリーズ④】

駅に着くと、既に電車は出た後だった。

(はー、やっちゃったよ……)

荒い息をついて早まる心臓を宥めながら、電光掲示板を見上げる。次の電車は10分後。
待ち合わせの駅はここから電車で15分ほど。さっきの電車でギリギリセーフの時間だったから、10分の遅刻。

デートに遅刻してくる彼女なんて、ほんと最悪。せっかく南雲が映画に行こうって誘ってくれたのに。

(宅配のお兄さんめーー!)

あんな絶妙なタイミングで来ることないじゃない!?
心の中で悪態をつく。

運悪く出かけに宅配が来て、受け取りをしていたら遅くなった。
実家からの荷物。よりにもよって冷蔵品!それさえなければもう5分早く家を出られてたのに!

宅配のお兄さんを恨むのはお門違いだろう。恨むなら、黙って冷蔵品を送り付けてきた母だ。

(もうもうお母さんったら!あれほど荷物を送る時は連絡してって言ってあるのに!留守だったらどうするのよ)

今度は母に対してぶうたれる。
次に母から『どうせ休みの日は家でダラダラしてるんでしょ?』と言われたら、『デートの相手くらい、いますけど!』と言い返してやろうか。
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