あと5分!【奈菜と南雲シリーズ④】
「なぐもっ!」

勢いよく振り向いた。
けれど、立っていたのは待ち人ではなくて―――

「おねえさん、どうしたの?迷子?」

二人組の若い男の子たち。

「一人?どこに行きたいの?俺たち案内するよ」

親切な言葉とは裏腹に、にやにやと笑っている。

「いえ、あの…大丈夫です……」

「遠慮しないでいいってば。ほら、俺たち困ってるヒト見ると放っておけないタイプだからさ」

「本当にだいじょうぶ…なんです……迷子じゃありません……」

「えー、じゃあなんで泣いてんの?あ?もしかして振られちゃった?」

余計なお世話だ。
そう思うけれど、今の私にはグサリと刺さる言葉だった。

それが態度に出ていたのか、二人組は「おおっ!あたり!」と嬉しそうに顔を見合わせている。

「ち、ちがいま」
「じゃあ、俺たちと遊ぼうぜ。おねえさんみたいに可愛い女の子を振った奴なんか、俺たちがすぐに忘れさせるからさ」

私の言葉なんて聞かずに、そう言った右のヤツ。
「結構です」と断ろうと思ったら、今度は左のヤツが私の腕を掴んだ。

「やっ、」

「いいだろ、どうせ相手は来ないんだし」

触れられたところからゾワゾワとした悪寒が走って、振りほどこうと腕を振ったけれどびくともしない。
震えそうになる足を踏ん張ろうとしたけれど、またしても細いヒールが(あだ)となる。
引きずられるようにして二三歩よろめいたその時―――

「てめぇら―――触んじゃねぇよ」

背後から掛けられた声に、三人一斉に振り向いた。
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