捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
しばしの休息
「……は?」
朝、気づいたらいつもと違う知らない部屋のなかにいましたけど。どういうことでしょうか?
いや、正確には言えば記憶にはある。
去年、アスター王子に連れて来られたソニア妃所有のタウンハウスのひと部屋だ。
北の大国であるノプット王国特産の材木をふんだんに使用した家具や、派手ではないけどセンスのいい調度品。騎士に過ごしやすい絶妙な配置のゲストルームは、確かに騎士の中の騎士である彼女らしいもの。
宿舎の硬いベッドとは比べ物にならない高品質なベッドだからか、目覚めはいつになくスッキリしている。
だけど……。
昨夜、珍しくアスター王子から「訓練相手になってやる」と言われたから、喜びいさんで夕方6時から深夜日付が変わる直前まで、無我夢中で身体を動かした。
当然、疲労困憊状態になったわたしは宿舎のベッドでバタンキューしたんですけど……。
朝、気づいたらここにいましたが?
「……アスター王子にやられた……」
最近なかなか馬上槍試合の練習も見てもらえなかったから、フランクスのアドバイスもあってアスター王子とランスの扱いの特訓をしたんだ。おかげで少しだけコツを掴めて、扱いが上手くなった気もするけれども。
まさか、アスター王子にわたしの悪癖を利用されるなんて。なんだか悔しくて、絶対抗議するぞ!と意気込んで、朝の訓練をするためにシャツを着替えた。