捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
御母上様

「ミリィちゃん、ミリィちゃん。婚約式はやらないの?」
「は?」

毎朝の習慣となった、アスター王子の御母上様でらっしゃるソニア妃へのお見舞い。国王陛下の第2妃でありながら、後宮のうちのさらに特別な離宮を賜る御方。王妃様以上に厚遇されてる気もします。
ご子息のアスター王子以上にぶっ飛んだ御方ではありますけど…。

「いきなり、どうされました?」
「だぁってぇ〜ミリィちゃんが本当に義理の娘になってほしいんだもの。婚約式やらないうちは、正式な婚約者って言えないじゃない?わたしの実家じゃ、両家が揃って約束を交わすユイノウって習慣があったのよ」

ユイノウ…って、初耳だけど。ソニア妃のご出身地のノプット王国では当たり前の習慣なのかもしれない。


「そういや、そうだな。アスターのやつ、あれだけわかりやすく独占欲丸出しで周りを牽制するくせして、肝心なとこでヘタレだもんな!あはははは!」

豪快な笑い声を上げるのは、かつて彼女の騎士見習いでアスター王子の同期である女性騎士、ピッツァ・ライトさんだ。よく日に焼けた小麦色の肌と燃えるような赤い髪をポニーテールにまとめ、同じ釣り眼ぎみの赤い瞳を持つ背の高い美人さん。
彼女はわたしを可愛がってくれるし、よくアスター王子をからかうから、またネタを見つけたんだろう。唇が楽しげに弧を描いてる。

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