捨てられた男爵令嬢は騎士を目指す2〜従騎士になったら王子殿下がめちゃくちゃ甘いんですが?
疑念



ふう、と息を吐いて集中する。

左手に握ったランスを意識しつつ、目標を一瞥した。
右手に持った手綱と両足の微かな動きの扶助(ふじょ)で、騎乗した愛馬へ意思を伝える。

「行くよ、アクア!」
「ブヒン!」

わたしの意思を汲んだアクアが、まっすぐ目標へ向かって走り出した。




「……おいおい、これ実践練習を兼ねた模擬試合だろ。マジになり過ぎるなよ」

面頬(めんぼお・兜の顔を守る面)を上げたフランクスが、呆れ顔でわたしに言うけども。

「そんな甘い考えだと勝てないよ、フランクス。わたしはエストアール家の騎士として、負けるつもりはないから」

キッパリハッキリと、同僚にも宣言しておいた。

アルベルト殿下とソフィア公爵令嬢のご婚姻の儀まで、あと一週間。

今日は馬上槍試合トーナメント最後の合同練習で、全身をフルプレートアーマーで武装して実践練習の模擬試合を行っていた。

授業では度々ランスの突合いや、馬上槍試合の模擬練習はしてきたけれども…やはり本番さらながらの練習は緊張感が違う。

今まであった実力差が、ここでハッキリとしてきた。

あからさまに買収を持ちかけたり、卑怯な手段で勝とうとする者もごく一部いるけれども…大抵は真面目に取り組む。
まだ見習いの従騎士とはいえ、将来の評価にも繋がる大一番だ。皆、真剣な面持ちで練習を重ねた。

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